イアン・ランキン著、延原泰子他訳
「大蛇の背中」
『貧者の晩餐会』
2004年、早川書房
そう。エジンバラは安全ではなかった。断じて。通りはどこもすさんでいた。裕福な者たちは旧市街を捨て、ノース・ロッホ(かつてエジンバラ市内にあった沼地。現在のウェイヴァリー駅あたり)へと移り住みつつあった。彼らはプリシンズ通りかジョージ通りに住んでいた。いや、悪臭に耐えられなくなるまではそこに住んでいた、と言うべきか。あの頃のノース・ロッホは蓋なしの下水も同然で、旧市街も似たり寄ったりだった。
日本の普通のガイドブックにはフェテス・コレッジのことは掲載されていない。通常の観光コースにはない。『エジンバラ A to Z』という詳しい地図を見ながら、二階建てのバスを乗りこなす。
二階建てバスは座れる席が多いので、乗客の視点からするととてもいい。バスに乗っていると、風景が市街地から郊外型へと変化していく。少し寂しい地域のようだ。細かい地図のおかげで、目指すフェテス・コレッジのキャンパスは簡単に見つかった。
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